トランプ大統領がやってきた!
トランプさんがアジア歴訪にやってきました。
最初の国に選んだのはわが国ニッポン!
日本国内でも、大統領選挙の頃からいろいろと物議を醸してきたトランプさんですが、いざやってくるとやっぱりうれしくなりますね。
さて、きょうはトランプさん来日の話題。
トランプ米大統領の来日には大きく2つの目的があります。これは明快です。
1.北朝鮮トラブル
2.日米間の通商問題
たーのしー!ドナルド・シンゾウ外交
まずは「1.北朝鮮トラブル」について。
ご存知のように、北朝鮮は核・ミサイル開発をどんどん進めています。彼らの目的は一貫して米国本土に打ち込める核を開発すること。
これまで北朝鮮は米国に大打撃を与える手段を持っていなかったので、米国も(今考えると)けっこう優しめの対応をしています。オバマ前大統領の「戦略的忍耐」によって対話の道を開こうとする姿勢もその表れでした。
しかし今は違う。ひょっとすると明日にでも北朝鮮が米国本土を襲うような大陸間弾道ミサイルを作り上げてしまうかもしれない。「『戦略的忍耐』と称して北朝鮮問題を『放置』してきた歴代政権のツケがいままわってきたんだぞ!俺様が解決してやる!」というのがトランプ大統領の今の姿勢。
だから北朝鮮に対する圧力はかつてないほど強めています。米国抜きに安全保障を語ることのできない我が国もこの動きに追随。
それに安倍総理としても外交実績は政権評価につながります。とりわけアメリカとの有効関係は重要。実際、トランプ氏が大統領選挙で当選した際には世界中に先駆けて、トランプタワーへ飛んでいきました。
それに二人は共通点が多い。肉好き、ゴルフ好き、いわくつき。安倍総理には森友学園・加計学園の問題が、トランプ大統領にはロシアゲート疑惑が浮上しています。そしてお互いに国民から人気がない。
詳しいことは朝日新聞6日付の朝刊に書いてあります。
(朝日新聞デジタルはPCでもスマホでも見やすいのでおすすめ。論調は、ね。)
個人的な友好関係を深める二人。一方で安倍総理にはこんな思惑もあります。
TPPはゆずれない
トランプ氏の公約はぶれにぶれて、世界じゅうが大騒ぎしていますが、大統領選挙の時からほとんど一貫している政策があります。
それは「反TPP」
TPPとは「環太平洋連携協定」。日本やアメリカを中心に、アジア・オセアニア地域で中国抜きの自由貿易圏を作り、経済のグローバル化を進めていこうという政策です。
アメリカのオバマ大統領肝いりの政策で、難航した交渉もどうにかケリがつき、いよいよ署名するだけ……というところでトランプ氏が華麗なちゃぶ台返し。就任するやいなや発行停止です。就任前からトランプタワーまで足を運んだ安倍さんでしたが、さすがにこの暴挙は止められませんでした。
なぜトランプ氏がかたくなにTPPを嫌がるのか。
理由は2つ。「支持基盤」と「貿易赤字の解消」
トランプ氏を大統領の座へと導いた人たちの多くは、「ラストベルト」と呼ばれるさびれた工業地帯の白人労働者たちです。かつては中流階級としてそこそこ豊かな生活を送ることができましたが、経済のグローバル化と共に産業が疲弊しまいました。
お金も自信も失った彼らの言葉に突き刺さった「MAKE AMERICA GREAT AGAIN!」
トランプ氏はアメリカンドリームをかなえた経営者でもあります。「彼を大統領にして、この町に再び活力を取り戻そう!」という彼らの思いがトランプ氏の背中を押しました。
同時に反移民感情などかなり右に寄った思想も蔓延してしまう結果となりましたが。でも寒々とシャッターばかりおりている商店街や、企業が立ち退いて巨大な抜け殻となったデパート跡を見てみれば、彼らの気持ち、ちょっとわかりますね。
貿易赤字の解消もそうです。実はアメリカの貿易赤字は世界最大級ですが、GDP全体から見ると問題のある額ではまったくありません。
発展途上国の場合、資本が圧倒的に不足しているので、海外から借り入れたお金で海外の企業から様々な設備を買い、インフラを整えたり首都機能を作ったりします。そういう国ではGDPのなかで貿易赤字が占める割合が非常に高くなり、深刻な問題に直面することもあります。
ところが、アメリカはそもそも爆発的な生産力を持った経済大国。リカードの「比較優位理論」のように、自国よりほかの国から商品を買い入れた方が全体としてお得。トランプ氏のように主張し、やみくもに関税をかけるのは、むしろ世界経済の中で孤立を深める逆効果が懸念されます。
TPP交渉において、日本は世界経済の中心的な役割を今後とも担い続けるために、国内を何とか説得して発行の寸前までこぎつけることが出来ました。それは安倍総理に対する評価とも一致しており、政権としては譲れないところ。「TPP離脱」と聞いてまだ民間人のトランプ氏に謁見へ向かったのも、この暴挙に近い離脱を阻止するためだと思われます。
ではなぜトランプ氏は貿易赤字解消に固執するのか。それは往年のトランプ氏が日本経済に大いに悩まされた過去があるからと言われています。
1980年代の日本は経済の最盛期。高い金利でお金を集めた銀行や、高収益をたたき出していた企業・個人はこぞって資産を求め、アメリカ中の不動産を買い付けました。当時の不動産王ドナルド・トランプの宿敵は、ジャパニーズマネーに他ならなかったのです。
それから20年以上たった今日、日本にはもう海外の不動産を片っ端から買い取るお金なんて全くありません。「でもやっぱり日本は憎い!いくら弱くなったって、おたくは中国の次にアメリカのお金を持ち出しているじゃないか!」というビジネスパーソン的思考もトランプさんの頭にはあるのかもしれません。
実際に、日米首脳会談では意見にはっきりとした違いが表れました。
2国間協定(FTA)によって有利に交渉を進めたいアメリカと、アジア太平洋地域で活力のある貿易をしたい日本。
日本の主張するTPPのような多国間の貿易協定では、どうしても最大公約数的な合意を探るために、各国が努力して妥協を重ねる必要があります。「TPP交渉の8割は国内向けの説得だった」と話すひともいます。
しかし2国間だったら外交のちからで、納得できるところまで激しくやりあえる。そういう思惑もあってのことでしょう。
ただ、こうした2国間の経済に関する問題について全面的な衝突を見せてしまうと、北朝鮮を利するだけ。両国はプライドをかけたギリギリのところで、柔軟な外交を展開しているわけですね。
トランプ外交まだまだ続く
トランプさんのアジア歴訪はまだ始まったばかり。
これから中国や韓国、ベトナム、フィリピンなどを訪れる予定だそうです。
世界の政治状況が大きく乱れる中、世界で最も影響力のある指導者がわたしたちの国のすぐそばを尋ねて回る。
まだしばらくは、ニュースはトランプさんのことでもちきりでしょうね。
衆院選を終えて① 甘えるな、野党
衆院選を終えて、2週間。
自民党の圧倒的な勝利で幕を閉じた選挙戦でしたが、振り返ってみると本当に誰が勝つのかが見当もつかない選挙戦でしたね。
野党のゆくえ
衆議院の解散直前になって衆院民進党が事実上の解党。前原代表(当時)の下で、希望の党になだれ込んで選挙戦を迎えるかと思われました。
ところが希望の党の小池代表は「排除」の2文字でリベラル議員の入党を拒否。今度は、8月末に民進党代表になり損ねた枝野さんを中心として、希望の党に拒否された議員たちの寄り合い所帯、立憲民主党が誕生しました。
当初あまり期待もされていなかったこの政党、最終的には議席を約3倍に増やす大躍進を見せました。支持率低迷にあえいだ民進党の政策をほとんどそのまま引き継いだ政党にもかかわらず、幅広い世代から支持を受けた立憲民主党。特筆すべきは自民党支持者の多い若い世代(10代・20代)で、SNSを中心に熱狂的なファンを獲得していった点ですね。ハッシュタグ「えだの立て」や「立憲カメラ」などは、多くのツイッターユーザーの間で広がりを見せました。
ネット選挙解禁から久しいですが、ここまでネットを駆使して支持を獲得した政党は立憲民主党が初めての例ではないでしょうか。自民党は膨大な資金をつぎ込んでネット広告を打ちまくってましたが、そもそもネットの広告なんて敬遠されるものじゃ…
みんなの予想を裏切る大勝利をおさめた立憲民主党。自民党の安倍一強状態が続く中で弱まってきたと思われていた「リベラル」の勢力は、実は衰えていたわけではなかったわけですね。今回の大きな発見です。
一方希望の党は、「政権交代」を標榜して順調に支持を伸ばしていたにもかかわらず、「排除」発言以降急に勢力が衰え、結局議席を減らす始末。小池さんの側近として活躍した若狭勝氏や、民進党から移籍した実力者・馬淵澄夫氏など、有力政治家たちも次々と討ち死にしました。「排除」発言以降風向きが変わると、希望の党公認候補たちが自分の党や代表をけなしたり、選挙ポスターや看板から政党名を消したり。選挙区で足を引っ張られないために、とうとう「比例は希望の党に入れなくていいです!」と叫ぶ候補者も現れる有様。
政治家は選挙で落ちると本当にただの人になります。しかも政治家本人だけでなく、その秘書や家族みんなが路頭に迷うこともあります。だから政治家という生き物は、必死になって、少しでも安心できる大きな船に乗りたがるものなんですね。ただ希望の党はタイタニックだった…。
本来関係ないはずの日本維新の会までこの沈没事故に巻き込まれ、あやうく海の藻屑となるところでした。大敗が予想されていましたがなんとか2桁の議席を守ったのはやはり地元政党に対する評価の表れでしょう。
維新については少々思うところがあるので、また今度書きますね。
立憲民主党のあおりを受けたのは保守系野党だけではありません。これまで民進党と共に野党共闘を支えてきた小沢さんの自由党や社民・共産党も大打撃をこうむりました。リベラル色を前面に出した立憲民主党と選挙協力をしたため、リベラル票をごっそり持って行かれてしまい大敗。ただ、共産党などは選挙協力自体は今後も継続するようです。理想のためには自分を捧げる。さすがイデオロギー政党といった感じがします。
ここまで見てきたとおり、結果として、自民党が諦めた議席を野党が椅子取りゲームのように奪い合うだけの選挙となりました。
野党って?
今回の選挙結果を見てみると、嫌われ者(のはず)の自民党が小選挙区のロジックをつかって大勝利を収めたことばかりが目につきます。すべての有効投票のうち、自民党候補と自民党へ投票された票の数は全体の5割程度。それなのに7割以上の議席を自民党が占めることになりました。「こんな選挙制度でいいのか!」なんて疑問が湧くのも無理はありません。
が、「小選挙区比例代表並立制」は優れた制度です。かつて実施されていた「中選挙区制」では、選挙区から複数当選するので、そのうち必ず1名は自民党候補になる。言い換えると、「大量の資金と全国に盤石な支持基盤を持った自民党は、すべての選挙区に候補を立てさえすれば、かならず第一党の座を保障される」仕組みなんですね。たしかに野党候補も当選しやすい仕組みですが、そうした時代が長く続いた結果、金権政治が蔓延しました。
政権交代可能な選挙システムこそ、現行の「小選挙区比例代表並立制」。野党がこの仕組みを使いこなしてないだけなのです。イデオロギーや政策の枠組みを超えて選挙協力を行い、この仕組みを使いこなして政治に再び緊張感を取り戻す責務が野党にはあるはずです。
「政策のぜんぜんちがう政党なんかと選挙協力していいはずがない」という批判もあるでしょう。しかし、それは野党の役割を十分に理解できていないのと同じです。
たしかに政党は、自らの理念に基づいて公約を掲げ、政権奪取後にはそれを実現するという大原則の役割があります。
ところが野党は、それと同時に「政権を批判して、自分たちの要求を飲ませる」という役割も持っています。
すなわち野党とは、もともと与党に比べて自分の政策に固執する必要は少ないんです。それが額面通りに法律となることは100%ありえないわけですから。
これまでの国会を見てきてもわかる通り、与党はなるべく多くの賛成を得たうえで法案を通すために、意外に柔軟な対応を取るものです。「特定秘密保護法」や「テロ等準備罪」など賛否を二分する法案ではさすがに激突しましたが、ことし注目された「性犯罪に関する刑法改正案」そのほか数多くの法案や、予算案については与野党で密に協議を重ねたり、委員会で話し合ったりなどして妥協点を探るものなのです。それが政治に対する現実的な姿勢なのは言うまでもありません。
そうすると政権を目指す立場である野党は、なおさら理想主義に走ってはいけないのです。
まずは野党同士で、理念や政策を超えた選挙協力が大変重要です。まして安倍一強状態の是正を求められている今回の選挙では、なおさらそれが重視されるべきでした。仮に野党連合による政権奪取まで考えていなかったとしても、与党に大きな打撃を与えることを目的として野党勢力を伸ばす意義は大きいのです。
各党が多くの候補を当選させるために、すみわけをせずに候補者を擁立することは極めて当然で合理的な行動です。しかしその結果がもたらすのは野党の総討ち死にでしかありません。
野党はいい加減、自民党と挑むふりをしながら椅子取りゲームに興じるのはやめたらどうですか。